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リスキリングとは?個人の学びなおしとの違い。企業の導入事例を解説

リスキリングとは?

岸田文雄首相が国会で「5年間で1兆円」を投じると発表したことで、一気に話題になった「リスキリング」。

リスキリングとは、働き方の変化に応じて、今後新たに発生する業務で役立つ知識を習得することを指します。

しかし「学びなおし」と訳されることからも、リスキリングの正しい意味が広まっているとは言い難い面があります。

ここではリスキリングの本当の意味と、企業の導入事例、導入することのメリットなどを解説します。

リスキリングの本当の意味とは?

リスキリングの本当の意味とは?

リスキリング(Reskilling)とは「再びスキルを身につけること」を指し、職業能力の再開発・再教育という意味を持ちます。

リスキリングの本来の意図することは、DX時代に対応すべく、企業が既存社員のスキルを磨き直しをサポートすることです。

リスキリングと学びなおしの違い

  リスキリング 学び直し
目的 DX時代に合わせ、社員のITスキルを向上させる。新しい仕事やポジションに配置転換する。 生涯学習や、転職・昇進のための個人的なスキルアップデート。
内容 企業が従業員に対し、自社の戦略に必要なスキルを再開発する。新しいことを学び、新しいスキルを身につけ、実践に活かす。 資格取得のための勉強や、現職のスキルアップのための講座を受講する。

リスキリングは、大人の習い事と混同されがちです。正しい意味は、企業や社員がデジタル化に対応できるよう、スキルのアップデートを行うことです。

ITリテラシースキルアップが目的

ITリテラシーのスキルアップが目的

リスキリングの主な目的は、DX時代に合わせ、社員のITスキルを向上させることです。

DX(デジタルトランスフォーメーション)とは、ビジネス環境の変化に合わせ、デジタル面で様々な改善を行うことを言います。

社内の業務を効率化するだけでなく、ビジネスを変革し、世の中に新しい価値を生み出すことも含まれます。

企業のDX化とは?

  • デジタル化に合わせ、製品やサービスをアップデート
  • 業務や組織の見直し、改善
  • 作業効率化し、残業を減らす
  • デジタル知識を活用し、新しい価値を生み出す…

またリスキリングは、社員のスキル向上だけに留まりません。実際に新しい仕事を用意したり、社員を新しいポジションに配置転換することで目的達成となります。

企業がデジタル化に乗り遅れず、責任を持って社員を再教育することが大きな課題になっています。

リスキリングが重要視されるようになった背景

リスキリングが重要視されるようになった背景

リスキリングが重要視される理由として、次の3つが挙げられます。

リスキリングが注目される理由

  1. DXが社会に浸透してきた
  2. デジタル化に対応できる社員が必要
  3. IT人材不足を解消する必要がある

多くの企業にとって、新しい技術・新しいビジネスモデルに対応できる人材の確保は、今後重要な課題になります。

企業がデジタル化の波に飲まれず、今後も生き残っていくためにも、すでにいる社員のITスキルを上げることが求められているのです。

DX時代とは?の図

DXが社会に浸透してきた

世界経済フォーラムは、2020年の年次総会(ダボス会議)で、第4次産業革命により新しい仕事が誕生する可能性を示唆しました。

これは新たな雇用の可能性を示すと同時に、将来的にいくつかの仕事がなくなる可能性も示しています。

新しい技術によって仕事が奪われることがないよう、人々はいっそう高いIT知識を持つ必要が出てきました。そこで日本の政府も、デジタル人材の育成に力を入れることにしたのです。

デジタル化に対応できる社員が必要

IT技術の進化に伴い、今まで以上に社内システムが効率化され、業務も簡略化されていきます。

新しいシステムが導入された際、社員にそれを扱えるだけの知識が必要です。企業の成長のためには、システムと人材の両面からのアップデートが不可欠です。

IT人材不足を解消する必要がある

現在はまだ、DXの推進に対応できる人が全国的に不足しています。IT分野では、今後もしばらくは人材不足が予想されます。

はじめからITリテラシーの高い人を雇うのは競争率が高いので、コストと時間はかかりますが、既存の社員にスキルを身に着けてもらうことが急務となります。

DX時代に取り残されないために

DX(デジタルトランスフォーメーション)の流れが一気に加速している今、成長チャンスを逃さないことが、企業にとっての最重要課題です。

流れに乗り遅れれば、企業は生産性を維持できなくなり、やがては倒産してしまう可能性もあります。

失業者を出さないためにも、多くの企業がDX推進に対応した人材を育成する必要があります。

DX時代に企業が生き残るためには

  • 時代の先を見据え、柔軟に対応する
  • 社員を再教育(リスキリング)する
  • システムや知識を常にアップデートする

既存のシステムに依存せず、常に先を見据えた判断をすることは、今まで以上に重要になります。

変化に応じて業務を改善したり、人員を新たに配置するなど、柔軟な動きが大切になります。

リスキリングを導入した企業の実例

リスキリングを導入した企業の実例

DX推進の流れに対応すべく、国内外の企業がすでにリスキリングを導入し、成功しています。

どんな企業が、リスキリングにおいてどのような取り組みを行っているのかご紹介します。

ヤフー株式会社

ヤフー株式会社は全従業員8,000人に対し、2年かけてリスキリングを実施すると発表しました。

全従業員がAI(人工知能)を業務で活用できるようになることが目的で、データ分析といった新しいスキルの習得を目指しています。

従業員は、ヤフーの親会社であるZホールディングス株式会社主催の「ZAIアカデミア」という研修を通し、技術を学んでいます。

キヤノン株式会社

キヤノン株式会社は「研修型キャリアマッチング制度」という、研修後に従業員が新しい部署へ社内転職できる制度を実施しました。

非デジタル人材が、デジタル業務に対応できるようにすることが目的で、これまでに140人ほどの従業員が部署転換しました。

ダイキン工業株式会社

ダイキン工業株式会社は、「ダイキン情報技術大学」という社内大学を設立し、従業員のDX人材化を進めています。

DX人材の不足という課題解決に向け、不足する人材を社内で補う方針を取りました。

リーバイス(LEVI’S)社

リーバイス(LEVI’S)社は、 コロナによる売り上げダウンを受け、 DX投資を行うことを決めました。

350名の従業員から43人を選抜し、 2ヶ月の間、週5日1日9時間、フルタイムでスキルを学ばせました。

その結果デジタル対応のできるスタッフが増え、オンラインの売り上げも前月比80%を達成しました。

ウォルマート

世界最大規模の小売りチェーンであるウォルマートは、バーチャルリアリティVR)を用いて社内研修を行いました。

イベントのトラブルを想定して、実際の経験がない従業員でも対応できるようにするプログラムなどが導入されています。

リスキリングのメリット・デメリット

リスキリングのメリット・デメリット

リスキリングのメリット・デメリット

  メリット デメリット
内容① 作業効率が上がり、無駄な業務が減る コスト、時間がかかる
内容② 業務が短縮され、残業時間が減る 通常業務の合間に、研修の時間がとれない
内容③ 新規事業の立ち上げや、時代にふさわしいアイディアが生まれる リスキリングした人材が、他社に流れる可能性がある

リスキリングを導入する上で、最大のメリットとなるのは、なんといっても作業効率化です。

一方で、リスキリングにはデメリットもあります。社内研修によって高いIT技術を手に入れた社員が、より条件のいい会社に転職してしまう可能性があることです。

人材が他社に流れないようにするためには、雇用の条件や環境も見直すことが求められます。

まとめ

リスキリングとは「大人の習い事」や「生涯学習」と違い、企業が既存社員に対し、DX推進化に対応できるスキルを身に着けさせることを言います。

通常業務の中で時間を割くのが難しかったり、時間やコストがかかるデメリットはありますが、業務効率化やイノベーションなど多くのメリットがあります。

リスキリングをうまく取り入れられない企業は社内のIT化に乗り遅れ、今後生き残ることが難しいかもしれません。リスキリングはそれほど大事な、ビジネス革新への第一歩であると言えます。